現地レポート

【現地レポート⑤ / 女子 3 回戦】小さくても戦える──可能性を示した静岡代表・ONEの誇り高き敗戦

2026年1月6日

 歴史的勝利まで、あと9.7秒でしたが、しかし──。

「2025年度 第 6 回 全国U15バスケットボール選手権大会 京王 Jr.ウインターカップ2025-26」女子 3 回戦で、大会 3 連覇を目指す京都精華学園 (京都) に挑んだ ONE (静岡) は、延長戦にもつれ込む大接戦の末に 73-77 で敗れました。

 第 4 クォーター残り9.7秒で 2 点リードしていた ONE。自軍のタイムアウト明けにフロントコートからのインバウンドを選択し、仮にボールをキープできていたら勝利を手中に収められる場面でした。

 しかし、京都精華学園が気力を振り絞ったディフェンスでパスを入れさせず。何とかバイオレーションを避けてパスを出すことはできましたが、レシーバーが味方同士で交錯してしまいターンオーバー。速攻に転じた京都精華学園は #15 アニボグ ジェニファー チナザ選手がブザービーターとなるレイアップを成功させ、試合の行方を延長戦に持ち越したのでした。

 その延長戦では #12 杉本愛姫選手の 3 ポイントシュートで先制した京都精華学園が終始主導権を握り、最後まで再逆転を許さず。ONE にとっては悔やんでも悔やみ切れない敗戦となってしまいました。

「あと少しで歴史を変えられたんですけど…」

 石川奈美コーチは敗戦に肩を落とします。

 ただ、留学生センターにマークされていたエースの #9 神谷和選手が外からドライブを仕掛け、そこからのキックアウトや合わせのプレーでズレを作って次々に得点。流れるようなオフェンスで相手ディフェンスを切り崩し、前半で 43-30 と大きくリードできたことは、“ 対・京都精華学園 ” のプランが見事に遂行されたことの証明でした。石川コーチも「前半はシュートも入って最高の流れでした。本当に良いバスケでした」と選手たちをたたえます。

 同時に「後半にシュートが落ち始めてオフェンスをどうするかとなったときに、足が止まってしまいました」とも話します。蓄積された疲労が体を、そして思考を徐々に鈍らせ、ハーフタイム時点で13点あったリードは、あっという間になくなってしまいました。

 それでも、もう一度ギアを上げて再逆転できたところに、ONE の強さがありました。神谷選手はその要因をコミュニケーションだと話します。「シュートが入らなくなるとみんなが黙ってしまうのがチームの課題だったので、『そうなるのはやめよう』とずっと話してきました。みんなで『シュートは入るから』とずっと言い合ってこられたことが良かったと思います」

 そうした声掛けで言葉で大きくステップアップした選手がいました。#15 佐藤惠子選手です。

「うちは本来、神谷と佐藤のダブルエース」と石川コーチが語るシューターは、1、2 回戦は緊張からか持ち味のシュートがまったく入らず。3 回戦前夜には「私のシュートはもう入らないから…」と自信を失いかけてホテルで涙を流していたと言います。それでも、神谷選手は佐藤選手を「私がリバウンドは取るから打って」と勇気づけ、結果的に彼女は 3 回戦で奮起。6 本の 3 ポイントシュートを含むチーム最多25得点の大活躍を見せたのです。とりわけ、第 4 クォーター残り 2 分29秒と同37.8秒に決めた 2 本の 3 ポイントシュートは、いずれもリードを 2 ポゼッション差に広げる価値あるシュートでした。

 結果的に敗れたことについて石川コーチは「これも実力」と悔しさをにじませます。

 それでも彼女たちが女王を瀬戸際まで追い詰めた「事実」は変わりません。「財産ですね。1 年間かけて作ってきたチームで京都精華学園さんを相手に通用した部分と足りなかった部分があって。悔しいですけど、ONE のバスケをやってくれたと思います」と石川コーチはおだやかに答えました。神谷選手も「小さくても気持ちとシュート力があれば、勝てるチャンスがあるというところを見せられたと思います」と前を向きます。

 女王の牙城は惜しくも崩せませんでした。しかし、彼女たちの戦う姿は多くのプレーヤーに勇気を与えたはずです。誇り高き敗戦だったと言っていいでしょう。

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